Dream*10 ページ12
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会社を出て､駅まで歩いて､電車に乗って､家に着くまで。
手は繋がれたままだった。
気付けばもう私の家の前。
｢家､着いちゃいましたね｡｣
｢そ､そうだね｡｣
扉の前で手を繋いだまま2人並んで棒立ちしてる､異様な光景。
なんだか気まずい空気が流れる。
｢ほんとに今日泊まってもいいんですか？｣
そんな空気なんか気にしていないのか､阿部くんが私にもう一度確認した。
こういう真面目なところも阿部くんの好きなところの1つ。
｢いいよ､約束したじゃん｡｣
｢じゃあ遠慮なく､おじゃまします｡｣
｢どうぞ｡｣
鍵を開けて玄関へと入る。
｢っうわ､｣
その瞬間､正面からふわっと抱きしめられた。
鼻をかすめる阿部くんの匂い。
｢俺､かっこわるいですよね｡｣
声が少し震えているように感じるのは気のせい？
阿部くんが弱ってるところなんて滅多に見ないのに。
甘やかしたくなって､背中をさすってみる。
すると､私を抱きしめる力が少し強くなった。
｢なに､どうした？｣
｢Aさんと交わした約束を全部破ってまで､社内に噂を広めたかったんです｡Aさんが俺の彼女だって｡｣
｢……はい？｣
｢悔しかったんです｡岩本先輩とAさんが仲良さそうに話してるところを見て､嫉妬したんです｡｣
阿部くんの口から出てくる言葉は全部私が信じられないような内容ばかり。
これほんとに阿部くんが喋ってる？
阿部くんが嫉妬するとか､現実？
私の都合のいい夢じゃないよね？
｢それと同時に焦ったんです｡もし仮に岩本先輩がAさんを好きだったらどうしようって｡｣
｢照が私を好きなわけないじゃん｡｣
｢そんなの分からないでしょ｡Aさんかわいいんだから｡｣
｢いや､あの､｣
慣れない甘い言葉の連続で頭はもうパンク寸前。
｢それなのにAさんは俺のこの気持ちに全然気付かないし､俺のこと避けようとするし｡俺がこの1週間どんな気持ちで過ごしてたか知らないでしょ？｣
｢ご､ごめん｡阿部くんを傷つけるつもりは全くなかったんだけど…｣
｢寂しくて死にそうでした｡Aさん不足で今も死にそうです｡どう責任とってくれるんですか｡｣
体が離れて視線が絡む。
そのままどちらからともなくキスをした。
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作者名：夏目 | 作成日時：2024年3月26日 17時
