Dream*3 ページ5
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｢私決めた｡｣
｢何を？｣
｢阿部くん依存症を治す｡完治させる｡｣
｢……はい？｣
阿部くんとのデートを終えた次の日。
私は楓にそう宣言した。
｢もうこれ以上阿部くんを好きにならないよう､自制するの｡｣
｢好きにならないようにって､阿部くんはAの彼氏じゃん｡好きでいたらだめなの？｣
｢だめなの｡｣
｢なんで？｣
｢振られた時に傷つかないため｡｣
そう､これは全部自分を守るため。
｢Aは振られると思ってるんだ｡｣
｢阿部くんが私みたいなやつとこの先もずっと一緒にいてくれるわけないもん｡｣
恋人っていう関係にはいつか終わりが訪れる。
永遠なんてきっとないんだから。
｢その言葉､阿部くんに言ったら怒られるよ｡｣
｢言わないからいいよ｡私がこっそり阿部くんから距離をとるだけだから｡｣
｢まぁ頑張れ､私はあんまり応援してないけど｡｣
こうして､私の“阿部くんから距離をとろう作戦”が始まった。
…作戦名がダサいことはあえて触れないでおく。
・
・
・
｢Aさん､今日も一緒に帰りますか？｣
楓に宣言した直後の出来事だった。
デスクに戻ると､阿部くんが私にそう言った。
一緒に帰るってことはデートするってこと。
したい。
阿部くんとデートしたい。
阿部くんと一緒に過ごしたい。
でもさっき決めたばっかじゃん。
阿部くんから少し距離をとるって決めたとこじゃん。
これは断らなきゃだめだよ。
脳内で2人の自分がそう言い合ってる。
｢Aさん？｣
名前を呼ばれて横を向くと､すぐそこに愛おしい人。
黙り込む私を心配そうな目で見つめる。
私は阿部くんのこういう目に弱い。
｢……いいよ｡｣
昼休憩の時はあんなに言い切ってたのに､実際は上手くいかない。
これが現実ってやつだ。
阿部くんの沼から私は一生抜け出せない。
これ以上ハマりたくなんかない。
依存したくないのに。
阿部くんといる時のこの甘い気持ちが愛おしくて､くせになる｡
また味わいたくなる。
もっと､もっと､って､心が阿部くんを求めてるの。
これ以上夢中になったらもう手遅れだって分かってるのに。
私のこんな気持ちなんか1ミリも知らない阿部くんがちょっとだけ憎い。
ずるいよ､ほんとに。
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作者名：夏目 | 作成日時：2024年3月26日 17時
