Dream*7 ページ9
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｢Aさん｡｣
気付けば目の前にいるのは阿部くんだった。
｢……｡｣
右肩は掴まれたまま､もう片方の手は壁に。
この体勢って壁ドンじゃん。
何歳になってもこの状況はドキドキしちゃうよ。
しかも相手が阿部くんなんだから。
｢まわりくどいのは嫌なので､単刀直入に聞きますね｡｣
｢…はい｡｣
ものすごく近い距離で､じっと見つめられる。
逸らしたくても逸らせない。
阿部くんが視線を離してくれない。
｢先週から俺のこと避けてますよね？｣
｢…避けてなくは…なくない｡｣
｢ふは､どっちですかそれ｡ていうか絶対避けてるでしょ｡｣
私の変な返しに思わず笑った阿部くんの笑顔。
久しぶりにこの距離で見たから余計にキュンとした。
こんな時に呑気なことを考えてる自分に少し腹が立つ。
｢俺､Aさんに嫌われるようなこと何かしました？やっぱり外で待たせちゃったことに怒ってるんですか？｣
｢そ､そんなことで怒らないよ！｣
｢じゃあなんですか｡分からないから教えてください｡｣
そう言って切ない表情をする。
私が大好きな阿部くんの大きなその瞳は､気のせいか少し潤んでいるように見えた。
私は阿部くんのこんな表情を見たいわけじゃない。
｢阿部くんは何もしてないよ｡｣
もうやめよう。
こんなこと続けても無意味だよ。
結局､私は阿部くんから離れられないんだから。
｢今までのことは全部､私のためなの｡｣
・
・
・
それからこうなった経緯を全て話した。
話が終わると､呆れたようにため息をつきながら私の肩に頭を置く阿部くん。
耳にあたる髪がくすぐったい。
｢なんなんですかもう｡意味分かんないです｡｣
顔を上げて､至近距離で再び絡む視線。
｢まず第一､俺がAさんと別れるわけないでしょ？俺だってこんなに好きなんだから｡｣
｢…はい｡｣
｢これ以上好きになったらやばいってなんですか？何がだめなんですか？｣
｢阿部くんに迷惑かけない？｣
｢迷惑なんて思ったことないですよ｡｣
｢私､阿部くんが思ってる以上に阿部くんが好きなんだよ｡自分でもやばいなって思うぐらい､阿部くんに依存してるの｡｣
｢そんなの俺からしたら全部嬉しいことです｡｣
｢え…｣
｢もうAさんは俺以外好きになれないってことでしょ？｣
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作者名：夏目 | 作成日時：2024年3月26日 17時
