Dream*8 ページ10
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｢そう､なのかな｡｣
｢そういうことでしょ｡｣
得意げに笑みを浮かべてそう言う阿部くん。
阿部くんの言う通りだよ。
私はもう阿部くん以外を好きになんてなれない。
自分ではもう分かってるの。
｢A？おーい､どこ行った？｣
少し離れたところから私を探す照の声が聞こえる。
そうだった､私今照と仕事してる最中だった。
思いっきり仕事中だった。
｢私行かなきゃ｡｣
この場を離れようとすると､腕を掴まれる。
｢この話の続き､今日の夜できますか？｣
そのせいでまた元に戻る体勢。
壁ドンされてる状態に逆戻り。
｢今日？｣
｢今日､Aさんの家に泊まりに行きたいです｡｣
｢えっと…｣
阿部くんが､私の家に､泊まる。
今まで遊びに来たことはあっても終電までには帰ってたから泊まるなんて初めてだ。
｢だめ？｣
そんな目で言われたら断れるわけない。
きっと阿部くんはそのことに気付いてる。
気付いてる上でそう聞いてる。
確信犯でしょ？
｢だめじゃ…ない｡｣
｢じゃあ決まり｡またあとで連絡しますね｡｣
｢うん｡｣
年上のくせに年下に弄ばれてるみたいでちょっと悔しい。
全部阿部くんの思うままになってる気がする。
｢じゃあ私行くね｡｣
｢あ､待って､｣
｢…？！｣
さっきまでも十分に近かった阿部くんとの距離は､気付けば0になっていた。
｢せっかく仲直りしたんだから､これぐらいしてもいいでしょ？｣
｢ここ会社だよ…｣
｢そんなの今はどうでもいいです｡｣
｢もう｡｣
｢早く行かなきゃ岩本先輩が探してますよ？｣
何を言っても私の負けだから､もう何も言い返せない。
諦めて部屋から出るとすぐそこに私を探す照がいた。
｢あ､いたいた｡｣
私を見つけた途端に笑顔になる照。
さっきまで阿部くんといたせいか､なんだか悪いことをしているみたいに感じてしまう。
｢なんか顔赤くね？｣
｢…別に赤くないよ｡｣
照のこういう時の鋭さ､今は発揮しないでほしい。
｢早く戻んないと部長に怒られるよ｡｣
｢うん､分かった｡｣
先を歩く照の後ろをついて行く。
唇の感触がまだ少し残ってる。
単純な私は思い返すだけでまたドキドキして､心臓の音が早くなってしまうんだ。
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作者名：夏目 | 作成日時：2024年3月26日 17時
