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(K side)
“私、深澤さんが好きなの。誰よりも”
泣きながら笑う彼女は、誰よりも綺麗やと思った。
「…後悔せんのやな？」
『しないよ、絶対。後悔しないように、するの』
さっきまでの弱々しい姿とは違う決意した目。
あー…こういう真っ直ぐなところも、好きやったんよな。
「あーっ！知らんからな！こんなええ男、振ってからに！」
『康二くん、』
「大丈夫、俺らはこれからも、今までも最高の友達やし。」
「…後悔。しないようにするんやろ？」
バン、とその背中を叩くと、痛い…と言いながらもゆっくり立ち上がった。
『…ごめん、私』
「謝らんといて！俺の方や、謝んのは」
『え？』
「…勝手にキスして、ごめんな」
そんな俺に対しても、笑顔で大丈夫だよと答える彼女は誰よりも優しいと思う。人のことばかり見て褒めるけど、本当に優しいのは自分やん。
後、俺さっきから気付いてんねん。あとはお願い、とか偉そうにカッコつけときながらドア越しに会話聞いてんの。
…やることがほんま、先輩のくせにださいねん。
「これはお説教やなあ」
『お説教？』
「いや、こっちの話」
かすかに聞こえた、扉から離れる足音。
…今追いかけたら、まだ間に合うから。
「よし！いけ！」
その背中を、さっきよりも力強く押す。
驚きながらも何かを悟ったのか、駆け出した彼女。
『…っ康二くん！ありがとう！』
ドアから出ようとした時、一度振り返ってみせた笑顔。
パタパタと走る音が、どんどん遠のいていく。
…足遅いんやから、ちゃんと走って追いつかんとあかんぞ。
「ーーー…ッ」
お疲れ、長年の片想い。
思わずしゃがみこんで、膝を抱えた。
“宜しくお願いします、向井さん”
“康二くんってば、ホントすぐギャグ言うよね”
“こんなこと話せるのは康二くんだけだよ”
叶うならAの特別になりたかった。俺が幸せにできる自信やってあるけど、でも、結局友達やって最高のポジションやねん。
俺に、誰かの代わりなんて言ったらダメだよと言ったA。
…自分の事好きやって言ってる男なんか、好きに利用して、好きに使って、好きに捨てたらいいのに。Aにならそうされても良いと思った。
でも…そうやんな。Aはそういう事は絶対しない。結局そんな所も、好きやねん。
こんだけ誰かのこと好きでおれた自分、めっちゃかっこええもん。自分で自分を慰めながら鼻をすする。
＿＿＿俺、Aのこと好きでおれて幸せやったな。
これは絶対に、嘘じゃないから。
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作者名：蒼 | 作成日時：2024年3月16日 3時
