Toxic Boy . Ⅱ (ページ13)

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3人で仲良く仕事場に戻ると、半泣き状態で出迎えた佐久間さん。

「いきなり午後休って聞いてびっくりしたよぉ！んで！何！そのほっぺ！！」
『ちょっと、色々、』
「色々！？ちゃんと話しなさっ、ぐえ」
「佐久間落ち着け。そして黙って仕事しろ」
「照ぅ…。ちなみにふかさわとこーじは後でお説教だかんね！」

私の肩を掴み、グラグラ揺らす佐久間さんを制したのは岩本さん。私の両隣には苦笑いの康二くんと深澤さんが立っていた。
岩本さんは何も言わず、頭をぽんと撫でて席へ戻った。
…2人の頭は、結構な強さで叩いてたけど。

「…もう、佐久間さん心配したんだから」
『はい、ごめんなさい』
「んーん！なんかでも…スッキリした顔してるから、よかった」

拗ねた顔から一遍、ニカッと笑う佐久間さんの笑顔は素敵だ。業務に支障がないからと座ろうとすると、今日は帰って休んでいいと言われて、お言葉に甘える事にした。

『いい天気だなあ』

こんな時間に帰路につくのは初めてだ。
帰り際、気をつけてねと優しく言った深澤さん。
また明日な！と笑った康二くん。

会社を出て数十分、ブブッとなった携帯電話の画面を開くと
深澤さんから1件のメッセージ。

【ハンカチ、返すって言ったけどやっぱり返さない】

『なんだ、それ』

返事を打とうとすると、また続けて入ったメッセージ。

【今日の告白、正直けっこードキッとした。わら】

それなら勝機、ありますね。
生意気に返事してポケットにしまう。

あーあ、そっか。恋人じゃなくなっちゃったのか。
でも、心做しかどこか気持ちが軽くなった。
好きなのに否定して、意地張って、嘘ついて、泣いてばっかりでから回って。
そんな自分より、今の自分の方が何倍も良い。

『…よしっ』

深澤さんは頑なに恋愛したがらないけど…でも、どこかで誰かに必要とされたがってる。だから社内でも有名な''プレイボーイの深澤さん''が出来上がったんだと思う。
岩本さんが飲み会に言っていた、過去の深澤さんの恋愛の事。花村さんも、前の彼女がどうって…言ってたっけ。

私は彼のこと、まだ全然知らない。
不躾に踏み込むのはダメなことも、何となくわかるけど。
もし彼が傷ついているのであれば、少しでも助けたい。

あの日ハンカチを貸した日から、もしかしたらこうなる運命だったのかもしれない。
そうだったらいいな、恋の始め方は少し間違えちゃったけど。

そんな少女漫画みたいにロマンチックな事を思いながら、軽い足取りで歩き出した。