Toxic Boy . Ⅱ (ページ21)

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【今日は一緒に退勤で！】

そのメールが来たのは、勤務が終わる5分前のことだった。
思わず顔を見ると、わざとらしくウインクなんかして。…悔しいけど、ちょっとカッコイイ。

「よっしゃー！終わり！」

pm17:00。時間になると同時に背伸びした佐久間さんと、早々に片付け始める深澤さん。

「おー、ふっか帰る気満々じゃーん」
「昼は誰かさんに邪魔されたからね」
「俺らのせいなん！？」
「仕方ないじゃーん、2人で出てく瞬間見ちゃったんだし」

おかげで昼抜きだぞ！愛妻弁当！と堂々と言うもんだからおもわず顔が熱くなる。

「…Aちゃーん？」

そんな様子をちょっと嬉しそうに見てきて、ほんっとに意地悪。職場でこういう関係になったのに、そんな私たちを優しく見守ってくれてる3人は、本当に優しいと思う。

『もう！帰るんでしょ！早く帰りますよ！』
「あは、かわいー。んじゃ、お先にぃ」

野次が飛んでくるのはお構い無しに、一緒に部屋を出た。

「…んー、ご飯行くのもいーけど、俺ん家いこ」
『…え！？』
「お弁当、2人きりで食べたいもん」

あの後、私は食べていいとのお達しが出てデスクで食べさせてもらったけど、深澤さんは反省しろとお昼抜きだった。…岩本さん、仲良しなのに甘やかずに手厳しい。

会社を出て数分。早く2人になりたいとタクシーを捕まえ手乗り込んだ。
隣に座る深澤さんが、控えめに手を握ってきて、それに対して私もきゅっと指を結ぶ。

「ふふ」
『…顔に出すぎです』

そんなに嬉しそうな顔されると、逆に調子が狂う。
タクシーが到着して、お財布を出そうとすると止められた。俺が出したいからって、やっぱり無意識でずるい人。

「よっし、もう邪魔もんいないわ」

玄関に入り、靴を脱いだ瞬間そう言って抱きしめられた。
……嗅ぎ慣れたのに、まだドキドキするこの甘い匂い。

「あー……っ、いい匂い」
『……私？』
「うん、石鹸の匂いする、ちょー好き」

香水はあまり詳しくなくて普段持ち歩かないし、仕事場でも付けないようにしている。
いい歳だしブランド物の香水に手を出した方がいいのかと悩んだこともあったけど。
深澤さんに言われちゃったら……なんか、それでいいやって思えてしまう。

「ごめん、ギューしてたら動けないね」
『あ、えと』
「俺、超ハラペコ。お弁当食べてもい？」

体を離して言われるので、思わず頷いた。…正直頭回んないというか、もうそっか、私たち両思いなんだって気付いて恥ずかしくなった。