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「うーまぁ！」
今日は比較的暖かくて、天気もいい。目的地の公園にたどり着き、ベンチに腰掛ける。
お腹すいたぁと早くも駄々を捏ねた深澤さんにさっそくお弁当を渡すと、ニコニコしながらいただきますと言った。…なんかかわいくて、ムカつく。
「これまさか全部作ってくれたの？」
『作りました、ちゃんと全部』
「マッジで美味いんだけど」
俺料理できないからさぁと、口いっぱいにご飯を詰め込んでもごもごと話す。確かに、家に行った時綺麗に揃った調理器具は使われた形跡が無かった。…え、どういう生活してるの？
『ご飯どうしてるんですか』
「んー、大抵外か出前かなぁ」
不健康極まりない。だからそんなに顔も青白いんじゃないのかと心配になる。若干失礼なのは承知。
「あ、でもたまに結が作って勝手に持ってくるかも。」
最後に告げた言葉に、思わず箸が止まる。
…結？普段はそういう呼び方してるんだ。思い浮かぶのは給湯室の花村さんの怒った顔。
「俺はいいって言ってんだけどねえ」
『そーなんですか』
「あ、怒ってる。また妬いてるでしょ」
どこか嬉しそうにするから、また期待してしまう。傷つきたくない。なのに一緒にいる時間が増えるほど、好きで悩んで、苦しくなって。
「こーじには作ったことあんの？」
『なにを？』
「お弁当じゃん」
『いや…ないですね。してもおかず交換くらいです』
ふーん、とにやにやする顔。どうせ、またワルイコトを言う前の顔だ。見分けが着く。
「これからは、おかず交換もダメね」
『…え、なんで』
「俺だけにして、手作り食べさせんの」
『意味分かりません、自分は花村さんに作ってもらったやつ、嬉しそーーに食べてたくせに』
そこまで言って視線を移すと、さっきの顔と打って変わって真面目な顔。…調子が狂うからやめてよ。
「俺も断るから」
『断る？』
「Aちゃんの料理以外、手作りの食べないよ」
おべんとーも、バレンタインも、ぜーんぶ。
恋愛に縛られたくないくせに、私の事はこうして縛る。そんな彼の言葉に、どこか特別感を感じて喜んでしまう私は、相当もうダメらしい。
言葉を返せずに呆然としているといきなりその顔が近づき、ちゅ、と軽く唇が触れた。
『な''』
「間抜けな顔してるからだよ〜」
『外！外です！！』
「かあいー」
次の月曜日からも弁当、楽しみにしてるね。
たまに出す、甘ったるい声でそう告げる。
『…リクエストは前日の19時までに言ってください』
「んふ、ありがとぉ」
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作者名：蒼 | 作成日時：2024年3月16日 3時
