45 ページ6
月曜日の朝。いつもと違うのは、台所に並んだ2つのお弁当箱。
あのピクニックの後、せっかくならお弁当箱買いに行こーよとのせられて、ショッピングモールへと向かった。途中ゲーセン行きたいやら、服が見たいやら寄り道が多くて深澤さんらしいなと思いつつ、子どもみたいにはしゃぐ彼を見るのは案外楽しいものだった。
『リクエストはからあげ、ね』
昨日の夕方、ご丁寧に送られてきたおかずのリクエスト。
バランスが取れるように野菜を入れたり、彩りを気にしたり、いちいち可愛いピックを使ったり。
一人の時は気にしてないことまで気にしてしまう。
『喜んでくれるかな』
いつもより重たい鞄が、少し嬉しい。トントン、とつま先を鳴らして、外へと出た。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「…あ」
『あ』
「んあ、おはよぉ」
会社のロビーで、ばったり会った姿。人目があるからか多少距離はあるものの、この2人の空気感はただの友人が醸し出す雰囲気ではない。…男と、女の、そういう感じ。
「深澤さんっ、なんで？」
「なんでって、前に話したでしょ」
「だって！やっぱり納得できないしっ」
「ごめんね、俺…誰かに縛られるのとか、無理だから」
お構い無しに続けた会話を横目に通り過ぎようとすると、肩を組まれ真横には深澤さん。ちょっと！と背後から声をかける方へ目線をやると、キッと涙目で睨む花村さんと目が合った。
『あの、大丈夫なんですか』
「んー？いいの」
『よく分からないけど、もう少し優しく言ってもいいんじゃ』
「んー…色々あんのよ」
離れたくても、肩は抱かれたままエレベーターへと向かう。乗り込んで、チラッと見上げると首を傾げながら眉を上げた。
「ロビーで出社被るのとか、初めてじゃない？」
『まあ、確かに』
「あ！ねね、お弁当作ってきてくれた？」
『…約束だし、ちゃんと作りました』
降りてすぐ、ウキウキした様子で聞いてくる。デスクで渡すと主に騒がしい2人に何を言われるか分からないので、その場でカバンから取り出して渡すと、嬉しそうに見つめている。
「やっば、楽しみ」
『よく言いますよ、慣れっこなくせに』
「もう作ってくれるのはAちゃんだけだもん。だからぁ、特別なの」
俺、すっごいお仕事頑張れちゃう、と頭を撫でられる。
直ぐに振り払っても、それを見てまたケラケラと笑うだけで。
『残したら許しません』
「残すわけないじゃーん？」
少し斜め後ろを歩いて、扉を開けた彼に続いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 645人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蒼 | 作成日時：2024年3月16日 3時
