Toxic Boy . Ⅱ (ページ9)

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あれから暫くは、そのまま泣いていた。
何度か通知が入ったのには気付いたけど、どうしても返すことが出来なくて。

【お腹痛いん？大丈夫か？】
【もう15分も経ってんで、ほんまに平気なん？】
【なあ、皆心配してんで】
【A、お願いやから返事して】

未だに流れる涙は止まらないまま。そんな中、画面を見ると康二くんからの大量のメッセージ。その後、最後に目に入ったのは。

【どこにいるか教えて】

たったその一言なのに、胸がぎゅっとなった。震える指で返事を返すと、直ぐに既読が付いた。

【すぐ行く。待ってて】

やっぱり弱い自分が大嫌いだ。期待しちゃうのも無駄だってわかってるのに。きっと彼は、誰にでもそうするのに。

あれから数分後、バタバタと聞こえた足音と勢いよく開いた扉。差し込む廊下の灯りが、やけに眩しい。

「っは…、」

その顔を見てまた頬に涙が伝う。…どうして私はこの人に、泣き顔ばっかり見せちゃうのかな。

『ふかざわ、さん』
「…もう大丈夫、大丈夫だよ」

スーツなんかお構い無しに膝をついて、座り込む私をぎゅっと抱きしめた。私の顔を一瞬見て驚いたような顔をしたけど、何も言わずに頭を撫でる。腫れあがった顔は、泣いてるのも相まって不細工だろうな。

「アイツに、結に…やられたの？」
『ちが、うから』
「嘘つかなくていいから。…俺のせいだ、ごめん」

私の頬を撫でる。どうして…深澤さんが痛そうな顔するの？

「俺、Aちゃんのことずっと泣かせてばっかだね」
「…練習だなんて俺から偉そうに言って、彼氏面して、でもはぐらかして、傷付けてるだけ」
「ハンカチの事だって…やっと探してた子に出逢えたって嬉しかったのに…また怖がって向き合うのを諦めた」

嫌な予感が走る。…嫌です、絶対に嫌だ。そう言いたくても、泣きじゃくったせいで声にならない。

「＿＿もう、やめよっか。恋人ごっこするの」

分かってるよ。優しい人だから、私の為を思って言ってることも。花村さんとの関係を切ったのも、自分を好いてくれてる彼女を…これ以上傷つけない為だって。

「またちゃんと話せる時に話そっか。とりあえず、救護室ね」

肩を優しく抱かれて、ゆっくりと歩き出す。
扉を出たところで、追いかけてきたであろう康二くんが立ち尽くしていた事に気づいた。こんな顔、見せたことないもんね、返事もしないで心配させちゃったな。

『…ごめんね、康二くん』
「…っ、A」

すれ違い様、彼に聞こえるようにだけ呟いた。